腰・首の椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、椎間板の潰れ(背骨の隙間が狭い)…
腰・首が痛いので、整形外科や整骨院で腰や首の牽引を受けている方は多いでしょう。
牽引療法は整形外科や整骨院(接骨院)では定番とも言えます。
そんな牽引療法の効果は実際どうなのでしょうか?
僕の結論から言うと、牽引の効果はほぼ無いと考えています。
牽引療法の効果がほぼ無い理由を、整形外科学会監修の「腰痛診療ガイドライン」からも引用して説明していきます。
症状改善に必要な考え方まで説明していきます。
首・腰の症状に悩まれている方は最後まで読んで下さいね。
牽引療法の目的
首から腰にかけての背骨は積み木を積み上げた感じです
背骨同士が直接当たらないように椎間板というクッションが入っています。
腰や首が痛くてレントゲンやMRI検査で、背骨の間が狭くなっている。
狭いならストレスがかかっている。
ストレスが腰や首の痛みの原因だろう。
ストレスを無くすためには狭い椎間板の間を元に戻そう。
じゃあ、上に引っ張って広げよう!
というのが牽引療法の考えです。
こう聞くと効果ありそうって思えますよね。
整形外科学会でも牽引には消極的?
日本整形外科学会が監修している「腰痛診療ガイドライン」というのがあります。
2019年改訂版で牽引療法は、エビデンスの強さは弱く、推奨もされていません。
詳細の基準は下図を見て下さい。
これをどう捉えるかは人それぞれですが。
僕としては、
牽引の効果はよくわからないけど、まぁやっても良いかな。
みたいに感じてしまいます。
「腰痛診療ガイドライン」より
牽引療法のエビデンスの強さと推奨の強さ
エビデンスの強さ | 推奨の強さ |
A(強):効果の推定値に強く確信がある | 1.行うことを強く推奨する |
B(中):効果の推定値に中程度の確信がある | 2.行うことを弱く推奨する(提案する) |
C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である | 4.行わないことを弱く推奨する(提案する) |
D(とても弱い):効果の推定値がほとんど確信できない | 5.行わないことを強く推奨する |
牽引力は分散される
背骨は何個あると思いますか?
首7個、胸12個、腰5個の計24個と意外と多いんですね。
例えば、椎間板ヘルニアを考えてみましょう。
首でも腰でも多いのは背骨の下部分。
理由としては下の方が重さの負担が大きい等があります。
牽引して、ヘルニア部分だけに効くと思いますか?
他の部分も牽引されて、牽引力は分散されますよね。
牽引療法では特定部分だけ狙うことは出来無いので効果がほぼ無いと考えています。
椎間板の水分量
狭くなっている背骨と背骨の隙間を広げるのが牽引療法の目的です。
背骨と背骨の間には椎間板があります。
椎間板は外側の線維輪と中身の髄核からなります。
椎間板ヘルニアとは、椎間板の中身が外に飛び出た状態です。
椎間板はほとんどが水分です。
水分割合は椎間板全体で約75%、中身の髄核は90%以上です。
背骨にかかる体重で椎間板が押し潰される事で少しずつ水分が押し出されます。
また加齢により保水機能が低下することで椎間板が小さくなっていきます。
背骨間の隙間を広げるためには、椎間板の水分量を増やす必要があります。
牽引療法で上に引っ張って水分量が増えると思いますか?
体重で押し潰されて水分が抜けるので、牽引時だけは抜けるのは防げるでしょう。
でも、牽引が終わればまた体重がかかるので抜けていきます。
また加齢等で保水機能が低下していれば、牽引したところで水分量は戻らないでしょう。
椎間板の観点からも牽引療法が効果がないと考えられます。
牽引による筋肉の緊張
腰や首が痛い時の筋肉は硬く縮んでいる状態です。
筋肉が硬く縮んでいるから強引に引っ張って伸ばそうとするのが牽引療法です。
牽引の力ってかなり強いですよね。
腰では小柄で年配の女性でも20kg以上で牽引したりします。
強い力で牽引してもらった方が効きそうな気がしますよね。
実は牽引で痛みがきつくなる場合があります
それが強い力で牽引している場合や、力みやすい人です。
強い力で牽引すると悪化する
牽引時の脳の話になります。
筋肉が硬くなっているのは、脳が危険を感じ硬くして守ろうと筋肉に指令を出しているからです。
守るために縮むように指令を出しているのに、牽引は強引に伸ばそうとしています。
脳からすれば強引にされると、さらに危険と考えてもっと縮もうとするんですよね。
強引に牽引で伸ばすと一時的には良くても後で戻ってしまいます。
それだけでなく、強く牽引し過ぎると悪化する可能性まであります。
例えば前屈で痛みが出るぐらいに押してもらってください。
痛いと太もも裏に力が無意識に入ってしまいますよね。
これと同じ事が起こるんです。
痛くない安全範囲で動かそう
牽引が効果が無いのはわかったけど、どうしたら良いの?
答えは、首・腰を痛みの無い安全範囲で動かすこと。
例えば、首が痛いなら首を痛くない範囲で動かす。
少し動かすだけでも痛いなら、首ではなく腰を動かす。
腰が痛い時も同じです。
背骨は積み木が積み上がった構造です。
下の動きが連動して上に伝わっていきます。
逆に上の動きも下に伝わっていきます。
硬くなっている首・腰を痛くない範囲で動かす。
すると、脳は考えを改めます。
①痛み無ければ危険では無く安全。
②安全なら身体を守る必要無し。
③筋肉を緩めても大丈夫。
この様に脳は判断して筋肉を緩めていきます。
首・腰が痛いなら肩や股関節を動かす
首・腰ともに悪くてどっちも動かすと痛い。
こんなに悪化しているなら、背骨周りを動かしていきましょう。
・股関節
・肩甲骨
この時の注意点も絶対に痛みが無い範囲で動かすこと。
痛みが強いなら軽く捻るところから。
そこから少しずつ動かしていきましょう。
そうすると、腰や首も連動して痛み無く動かせる様になっていきます。
効果をすぐ実感出来る場合もあります。
症状が強ければ、1日では効果を感じず数日〜数週間かかる場合もあります。
少しずつ痛みなく動ける範囲を広げていきましょう。
すぐに広がらなければ無理して広げなくても大丈夫です。
この考えはどんな症状にも応用が効き、僕は常にこの考えで施術にあたっています。
牽引で効果を出すなら弱く
牽引は効果はほぼ無い。
と書きましたが、少し効果を出す事は出来ると思います。
方法は腰・首ともに痛くない程度の牽引。
「イタ気持ち良い」も痛いが入ってるのダメ。
リラックスできる程度の牽引なら脳も安心して筋肉も緩むと思います。
隙間を広げる目的の力では強過ぎてダメ。
リラックスするには牽引されているかどうかもわからない程度で十分です。
そうなると、やっぱり整形外科や整骨院での牽引は効果無いという考えになります。
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